毎月第2・第4木曜日に放送中のAI作曲×音声配信番組『Sunoパ!』。パーソナリティのべるぼ氏とかなめ氏が、AI音楽のディープな魅力とクリエイターたちの熱量を届けるこの番組に、ついに“あの人”がやってきた。
元ゲームサウンドクリエイターであり、現在のAI音楽界隈において確固たる地位を築くクリエイター、Jayz(ジェイズ)氏だ。X(旧Twitter)ではそのアイコンと親しみやすさから「タモさん」の愛称で親しまれる彼だが、生み出される楽曲はAI作曲でもプロ概念を誕生させていい程の緻密さとエモーショナルな響きを持つ。
今回は、約1時間半にわたって語られた濃密すぎる音楽談義の中から、Suno v5.5の攻略法やフェス向け音作りの裏技、そしてMV制作の思考プロセスに至るまで、限界まで肉薄したハイライトをお届けする。AI音楽に触れるすべての人にとって、まさに“神回”と呼ぶにふさわしい内容だ。
Jayz(ジェイズ)さん
AI音楽・AI映像制作を軸に、楽曲制作からMV表現、クリエイティブのクオリティアップまで幅広く発信されているクリエイター。
AIをただ使うだけではなく、「どうすれば作品としてもっと良くなるか」を探求し続ける姿勢が印象的で、音楽生成AI界隈でも注目の存在です。
今回は、AI音楽の制作・表現・楽しみ方について、Jayzさんならではの視点でお話しいただきます😊✨
Jayzさんプロデュース「篠目 霧(ささめきり)」
1. 雲の上の存在、AI界の“タモさん”登場秘話
番組冒頭、少し緊張気味なべるぼ氏の声からスタートした。無理もない。彼らにとってJayz氏は、番組立ち上げ前からの「目標」であり「雲の上の存在」だったのだ。
☂️ べるぼ
「何を隠そう、僕ら『Sunoパ!』を始めようとした時、目標はJaysさんにしてましたからね(笑)」
🕶️ Jayz
「いやー、いいですね。身近な目標。大事です」
☂️ べるぼ
「身近と言っていいのかも分からないんですけど……僕らにとってはもう、雲の上の存在ですからね!」
🕶️ Jayz
「なんか、あのドリフの雷様ぐらいの『よくある雲』感で大したことないんですけど(笑)」
軽妙な返しで場を和ませるJays氏。実はこの番組、最初は別の名前になる予定だったという。
☂️ べるぼ
「僕が企画を立ち上げた時、『AIミュージックステーションにしようか』ってギャグで言ったんですよ。そしたらかなめちゃんから『いや、実はもうAI界にタモさんがいます』って言われて(笑)。業界的にもちょっと怖いからやめときましょうかってなったんです」
🦐 かなめ
「タモさん、いましたね(笑)」
🕶️ Jayz
「(笑)。気がついたらタモさんって呼ばれるようになっちゃったので、そのままアイコンもそっちに寄せてやってる、みたいな不思議な感じでございます」
元々はPlayStation2やNintendo Switchのゲームでサウンドクリエイターを務めていたというJayz氏。AI音楽においては、その既存の知識をそのまま持ち込むのではなく、「あえてプロンプトベースからやる形に倒して、根っこの方から一緒にやっていこう」というスタンスで2年ほど活動を続けているという。
2. 『深淵』から紐解く、Suno v5.5の「お小遣い(MP)」理論
中盤、Jayz氏が手掛ける架空のAI男性フォークシンガー「篠目 霧(ささめきり)」の楽曲『深淵』がオンエアされた。Sunoのバージョンアップがもたらした「広がりすぎるサウンド」を、あえて極限まで活かしたという没入感たっぷりの1曲だ。
聴き終えたべるぼ氏とかなめ氏からは「めちゃくちゃ綺麗」「没入感がやばい」と感嘆の声が漏れる。ここから、Suno v5.5の核心を突くプロンプト論が展開された。
🦐かなめ
「これ、空間というか録音の仕方みたいなメタタグもめっちゃ入れてるんだろうなって想像できるんですけど……『こんな部屋で録音してます』みたいな指定も入れてるんですか?」
🕶️ Jayz
「いい質問なんですけど、結論から言うと、そこら辺あんまり入れてないです。これ結構大事なんですけど、Sunoって1回曲を作る時に使えるトークン……RPGで言う『MP』や『スタミナ』みたいなものがあるんですよ。Sunoがユーザーに対して『1回作るたびに1000円ね』ってお小遣いを渡してるような感覚で」
☂️ べるぼ
「なるほど……お小遣い」
🕶️ Jayz
「その1000円で、音楽的なことを全部プロンプトに突っ込むと処理しきれないんですよ。途中で『お金ないんで買い物できません、ごめんなさい』ってSunoがしょんぼりしちゃう(笑)。プロンプトやメタタグを盛りすぎると、曲の中盤から後半にかけてすごい息切れした感が出ちゃうんです。最後の方モニョモニョってなっちゃう」
だからこそ、Jayz氏は「メタタグで書かなくてもSunoがやってくれること」はあえて書かず、コード進行やコーラスのタイミングなど「言わないとできないこと」にMP(トークン)を集中させているという。これにはべるぼ氏も「色々と腑に落ちました!」と深く頷いていた。
3. シンプルモードのすゝめと、プロンプトブースターの裏技
Sunoを使いこなす中で、Jayz氏は意外なリセット方法を明かした。
🕶️ Jayz
「僕、たまに凝ったのを作った後に、あえて『シンプルモード』で深く考えずにスタイルのタグを3つぐらいだけ入れて作るんですよ。こだわったことを一回やっちゃうと、脳内がずっとその状態になっちゃって。例えばサイバー演歌を3曲連続で書いた後、次はロックをやりますって時に、一回リセット挟まないと脳みそがサイバー演歌のままになっちゃうし、Suno側もキャッシュが残ってるのか引きずっちゃうんです」
さらに、多くのユーザーが悩む「プロンプトブースター(スタイル欄のオレンジ色のボタン)」の活用法についても、目から鱗のテクニックが語られた。
🕶️ Jayz
「やりたいことを翻訳ソフトで英語にして、あのオレンジのボタンをポチッと押すじゃないですか。あれ、1回じゃなくて2、3回押すといいんですよね」
🦐 かなめ
「えっ、そうなんですか?」
🕶️ Jayz
「1回だと直訳っぽくなっちゃうんです。『This is a pen』を『これはペンです』って訳すのか、『ペンだよ』って訳すのかみたいな違いで。2、3回押すともう少し直訳感を崩してくれるので、Sunoがより組みやすい形に変わるんです」
AIとのキャッチボールを「リアルな人間相手と同じ」と語るJayz氏。相手に伝わりやすい言葉(プロンプト)を選ぶことが、無駄なMP消費を防ぎ、クオリティを上げる直結ルートなのだ。
4. フェス向け音作り!「Cover」機能でライブの空気を再現する
番組後半の話題は、界隈で盛り上がりを見せる「AI音楽フェス」に向けた音作りに移行。野外ライブやライブハウスの臨場感をどうやってSunoで表現するのか。
🦐かなめ
「ライブバージョンを作る時って、ライブハウスの箱の規模とか、野外フェスの会場の広さとかを指定した方がいいんですか?」
🕶️ Jayz
「与えた方が良い上に、もうやってる人はいますね。ただ、おすすめは、とりあえず作りたいものを一回バッとラフめに作っていただいて、それを『Cover』機能でクリア化するのがいいかなと思ってます」
Jayz氏の手法はこうだ。
まず原曲を作り、Cover機能を使用する。その際「Audio Influence」の数値を83程度(100だとやりすぎになるため)に設定。そして、スタイル欄に「音がクリアになる指定」や「観客の声を聞かせる指定」などの音を整えるためのタグだけを入れる。
🕶️ Jayz
「で、こうなってほしくないこと……例えば『モコモコしないでほしい』とか『リバーブ多すぎてよく聞こえないのはやめて』みたいなことを『Exclude』に入れてCoverをかけるんです。そうすると、原曲をあまり崩さずに、スタイルに変えた音が反映されたものが出てきます」
ただし、矛盾したプロンプトには要注意だという。
🕶️ Jayz
「『コンボジャズ』って書いてるのに『3万人入る野外フェス』って書いたら、AIも『どっち!?』ってなって事故を起こすので(笑)。そこはちゃんと整えてあげなきゃいけないですね」
5. 動画(MV)制作の極意は「雑落書き」にあり
フェス企画となれば、音だけでなく動画(MV)のクオリティも求められる。しかし、動画制作にハードルを感じるクリエイターは多い。ここでJayz氏が提案したのは、非常にアナログかつ実践的なアプローチだった。
🕶️ Jayz
「自分が見せたい絵のイメージを、一回『雑落書き』するといいと思うんですよ。紙にペンでザクッと四角を描いて、その中に一番見せたいキャラクターがどのくらいの大きさで、どんなことをしてるか。棒人間でいいので」
🦐 かなめ
「棒人間でいいんですね」
🕶️ Jayz
「ステージの柱とかスクリーンも適当に描いて。で、それをスマホで写真撮って、画像生成AIに『これが僕がやりたいライブの一番見せ場のシーンのラフです。何枚目のキャラをここに当てはめて、何万人入る野外ステージっぽくやってみて』って投げつけるんです」
最初から完璧な映像を求めるのではなく、自分の中にある「一番気持ちいい構図」を可視化し、AIとの認識をすり合わせる。この「基準」を一つ作ってから走り出すことで、作業中に迷子にならず、どこまで頑張ればいいかのゴールが見えるのだという。
6. プロの音圧を120円で!? マスタリングの重要性
対談の最後、Jayz氏から全AI音楽クリエイターに向けた超有益な情報がもたらされた。それは「マスタリング」についてだ。
🕶️ Jayz
「Sunoから出した曲を配信に出す時、プロの曲と並んで鳴った瞬間にいきなり音量が下がるんで、最低限オンラインマスタリングはしてほしいって話があるんです。で、X(旧Twitter)で『Bottaさん』って方がマスタリングのオーダーを募集してて。10曲で1200円、1曲120円でやってくれるんですよ」
☂️ べるぼ
「えっ!? 安いですね!」
🕶️ Jayz
「安いですよ! 普通のスタジオに頼んだらそんなんじゃできないし、TuneCoreの自動マスタリングでも1曲660円取られますから。ただ、お願いする時に絶対に『用途』を添えてください。YouTube用なのか、CD用なのか、ストリーミング用なのか」
用途を伝えないと、ベストを尽くして「CD用のパンパンに音圧を上げた状態」で納品されてしまい、そのままYouTubeに上げると音が割れてしまうのだという。プロの技術を破格で提供してくれるBotta氏への依頼は、今後のAI音楽界隈のスタンダードになっていくかもしれない。
編集後記
「100点を出そうとするな。AIに預ける以上、諦める余白を自分の中で持っていかないとダメ」。
Jayz氏の言葉には、AIという予測不能なパートナーと共に歩んできたクリエイターとしての深い諦観と、底知れぬ愛情が込められていた。
Sunoは魔法の杖ではない。こちらの問いかけ(プロンプト)の解像度が低ければ、相応の答えしか返ってこない。しかし、相手の特性(お小遣い事情)を理解し、適切な言葉をかけ、時には雑な落書きでイメージを共有すれば、想像を絶する名曲を生み出してくれる最高の相棒になる。
約1時間半に及んだ熱狂のSunoパ!。Jayz氏が惜しげもなく披露したこれらのノウハウは、今日からでもすぐに試せるものばかりだ。ぜひアーカイブ音源を聴き直しながら、あなたのSunoのプロンプト画面を開いてみてほしい。きっと、今までとは違うAIの表情が見えてくるはずだ。


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